モデルを用いた血管弾性率のシミュレ−ション−CPB中に橈骨動脈圧が大動脈圧から解離していく現象との関連−


東海大学医学部麻酔科

○斉藤聰、福山東雄、杵淵嘉夫、金沢正浩、滝口守


 CPB中に、橈骨動脈と大腿動脈圧や大動脈圧を連続的にモニタ−していると、ある時点から橈骨動脈圧が次第に低下し始める。この現象の直接的な原因はまだ不明であるが、血圧の低下がそのまま固定、保持される場合が多く、血管壁の弾性率の低下が関与していると考えている。このような症例では結果として大動脈・橈骨動脈間圧較差が生成される。もちろん、このような現象を示さない症例もあり、大動脈・橈骨動脈間圧較差は生じない。
 大動脈・橈骨動脈間圧較差が生成される場合は、管内圧の低下が弾性率の低下を招き、弾性率の低下が低い血圧を維持すると考えた。この現象が再現できるかどうかを実験的に検討した。EVR(Ethylene Vinyl Rubber)の細管を用いた血管モデルをディピングにより作成し、管内圧と体積弾性率との関係を測定した。EVRは実際の血管よりも柔らかく、体積弾性率の変化は血管のそれに類似している。次に、回路シミュレ−タ(PSpice,MicroSim,USA)上に管内圧と体積弾性率との関係を組み込みこんだ。バイアスに相当する直流成分を持った正弦波信号をシミュレ−タの入力し、シミュレ−タの出力が入力のバイアス大きさによってどのように変わるか検討した。
 EVRは均一な細管を作成するのが難しく、管内に拍動流を流すと局所的に応力が集中して破裂や動脈瘤を形成しやすい。管壁の静特性が測定できればシミュレ−タ上での検討も1つの方法ではないか。




タイトルインデックスへ戻る
著者名インデックスへ戻る
トップページへ戻る