入力が容易になるように知能を持たせた静脈麻酔薬オフラインシミュレーションソフト(マッキントッシュ版)の開発

中国電力(株)中電病院 麻酔科
中尾正和

 近年静脈麻酔が普及してきたが,静脈麻酔では実測しながらの麻酔管理は不可能なため,薬物動態データをもとに数学的にシミュレーションする手法がよくとられる.
 そのため筆者はIBMコンパチ/NECのDOSマシン用とマッキントッシュ用オフラインシミュレーションソフトを1992年日本麻酔学会ソフトウエアコンテストで発表した.さらに1996年にはプロポフォール術中投与を助けるために特化してポンプの情報をオンラインで取込んで自動計算させるPropMonを発表し,対応するポンプの拡大やフェンタニルもサポートしたPropFMonへと改良を続けている.
 一方,オフラインで使用するソフトは術前のプロトコル考案,術後の症例検討にも利用でき,ユーザーからの希望も多い.8年前に小生のつくったIV_simもQUICK-BASICで作成されていたが,開発言語自体をマイクロソフトがサポートしなくなったため,新世紀にはふさわしくなくなった.すでに,ウインドウズ版の静脈麻酔シミュレーションソフトはわが国でも複数開発されているが,マイノリティーであるマッキントッシュ用としてデータ入力の容易さに主眼をおいて新規に開発した.
 
旧作IV_simからの改善点
3コンパートメントモデルを連立微分方程式で解く点は同じ.今回はルンゲ-クッタ法
プロトコール入力をする際に,入力手数が少なくデータの再利用が行いやすいように配慮した.
オンラインソフトPropFMonで好評だった機能を加え 複数の薬剤を同時に選択できるようにした.
数値データ,トレンドグラムのほか, コンパートメントモデル表示,鎮痛薬と鎮静薬の相互作用が見やすくなる2次元表示薬剤とその薬物動態パラメータを選択し,時間と投与速度を入力すれば計算させてプロットができる.

【プロトコール入力の簡便化】
 日常の使用の際の入力に要する時間が少なくなるように知能を加えた.
1.体重あたりか,実際量のどちらかを入力すると,他方を自動的に計算させる.
2.またあとから体重入力を変更したら,実際量を再計算できる
3.入力抜けがおこると,総投与量を間違うので持続投与データはその時間以降も自動入力される
4.時間のデータ入力が時系列になっていないと問題のセルを警告できる
5.データの再利用
 ファイル出力;投与プロトコールは他のソフトでも利用できるようにタブ区切りテキスト形式のファイルとして保存可能
 ファイル入力;定型のファイルのみならず,未知のファイル(タブ区切りテキスト)から,時系列と投与量,速度の情報があれば,どの列がどのデータであるかを確認させて,本ソフトにプロトコールを取り込むことが可能

開発環境 Staz社FB^3,MacOS9.0.4,PowerBook G3
動作環境 MacOS7.5.1以上

参考文献:
中尾正和,シリンジポンプのデジタル情報を利用したオンライン静脈麻酔薬プロポフォールシミュレーション
麻酔, 46:279-283,1997



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