年齢によるpharmacodynamicsの影響を取り入れたTCIソフトウェア
諏訪中央病院麻酔科 *1、富士吉田市立病院麻酔科 *2、山梨医科大学麻酔科学教室 *3
○増井健一*1、野中明彦*2、樫本温*3、熊沢光生*3
【はじめに】
プロポフォールの覚醒時濃度は年齢によって異なるが、Schniderらはこの覚醒時濃度を数式にして報告した。筆者らは、昨年開発したプロポフォール薬物動態シミュレーションソフトに、年齢によるpharmacodynamicsの影響[1]を加味した覚醒予測時間表示、およびTCI機能を付加したので報告する。また、その他の付加機能についても述べる。
【開発環境】
使用言語はVisual Basic 6.0 for Windows98/2000。シリンジポンプはGraseby3500を使用した。
【年齢によるpharmacodynamicsの影響を取り入れた機能】
Schniderらは25-81歳のボランティア24人から次のような式を得た[1]。
Pasleep=C^4.29/(C^4.29+(2.9-0.022*age)^4.29)
C:血漿プロポフォール濃度、age:年齢、Pasleep:プロポフォール濃度がCのときに就眠している確率
この式で使用されている血漿プロポフォール濃度は、一定速度で60分持続注入した時点での濃度から算出されている。この場合、Cと効果部位濃度の差は最大で約0.05μg/ml程度なので、Cを効果部位濃度と考えても差し支えないと考えている。
筆者らはこの式から、TCIの濃度設定にC95(Pasleep=95となるときのCの値)およびC80(Pasleep=80)を用い、覚醒予測時間表示の覚醒濃度としてC20およびC5を採用した。
【その他の付加機能】
その他の改良点としては、@血中濃度および効果部位濃度のTCI機能追加、Aフェンタニル濃度のシミュレーション、BUSBポートに対応(USB-RS232C変換ケーブルが必要)などがある。フェンタニルのシミュレーションはワンショット投与時に投与量をボタンで入力する形式である。また、プロポフォールの基本投与方法をシミュレーションする機能を追加した。これによってプロポフォールのマニュアル投与が、どのような血中および効果部位濃度を導くのか視覚的に捉えられる。
【考察】
コンピュータになれないユーザーは安全性・信頼性・操作の煩雑さの問題から、TCIソフトには縁が遠いと思われる。来年に発売される予定のDiprifusorは、これらの問題を解決するので時間とともに普及するであろう。しかし、さまざまな機能を持ったシミュレータとしてのTCIソフトは、静脈麻酔の理解を深めるために、これからも使用されることが望ましい。
【結論】
年齢によるpharmacodynamicsの影響を覚醒予測時間、TCIのターゲット濃度の参考にしたTCIソフトウェアを開発した。
【ソフトの配布】
本ソフトはhttp://masui.oc.to/msfactory/にて無償でダウンロードできる。
[1] Schnider TW, et al: The Influence of Age on Propofol Pharmacodynamics.
Anesthesiology 1999; 90: 1502-16
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