観血的動脈圧モニタリング波形から本来の血圧波形をオンラインで推定する試み
京都府立医科大学麻酔学教室1
○林和子1、田中義文1、橋本悟1
観測される動脈圧モニタリング波形は、圧モニタリングシステム全体の周波数応答特性に大きく影響され、圧モニタリングシステムの性質に依存して実際の圧波形は歪んで表示される。また波形の歪み具合は循環動態にも影響される。それ故、使用している圧モニタリングシステムの特性を理解し、表示圧モニタリング波形から実際の圧波形を推定することは簡単ではないが、正しく循環動態を把握する上で重要である。従来、圧モニタリングシステムの特性は固有周波数とダンピング係数で表わされてきた。これらは、一般にフラッシュテスト等を用いて比較的簡便に調べることが可能であり、臨床においてその場で容易に周波数応答特性の概要を知ることができる。しかし、正確な波形の復元は難しい。動脈圧測定部から圧モニタリングシステムへの入力と圧モニタリングシステムからの出力情報との関係から求めた周波数応答特性は、その比である伝達関数として表わすことができ、逆に伝達関数を求めれば、モニター上の出力圧波形から測定部位での実際の圧を算定することができる。
しかし、この方法での逆算では広い周波数領域での多大な計算量を必要とするため、これをリアルタイムで臨床応用することは容易でなかった。
一方、動脈圧測定部位での入力としての本来の圧波形と、圧モニタリングシステムを介した出力としての測定圧波形との関係は、2階の微分方程式で近似できることが知られている。システムの入力に対する周波数応答(固有周波数、ダンピング率)をこの微分方程式に置き換えることで、少ない計算量で本来の入力測定部の圧を計算することが可能となる。今回、私たちは当施設で使用している圧モニタリングシステムの動脈留置カテーテルを含めた全体としての周波数応答を計測して、固有周波数、ダンピング率を調べ、その結果から2階微分方程式の係数を決定して、表示モニタリング圧波形から本来の圧波形のオンラインでの近似的逆算を試みた。この方法は、循環動態にも依存する圧モニタリング波形の歪みを簡易にオンラインで補正し、容易に本来の血圧波形の描出を可能にすると思われる。
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