BIS関連の各種パラメータ算出に関する問題点について

1 大阪府立羽曳野病院麻酔科,2大阪大学医学部附属病院手術部, 3大阪府立病院麻酔科
○1萩平 哲,2高階 雅紀,3森 隆比古

米国では高い評価を得ている麻酔深度モニターであるBISモニターはその内容が公開されていないために科学的検証に用いるには多くの難点がある.BISの内部に関する情報源は非常に限られており,我々が入手可能な資料はわずかに以下に示す3つ程度の論文および総説のみである.
我々は昨年の本学会でBispectral Analysisを行いBISのサブパラメータを算出ためのソフトウェアBSAを発表したが,BSAを作成する際にこれらの資料の数々の不備に直面した.今回はこれらの不備を検証しその数学的な問題点について考察を加えたので報告する.
(1) SynchFastSlowの算出方法について:SynchFastSlowサブパラメータは文献1によるとBispectral Analysisを元にしているとされており,その計算式も記されている.しかしながら書かれている計算式では算出不能な周波数のパワーが必要であるため,その通りの計算ができない.現時点では正しい計算式は不明であるが,我々が作成しているBispRatioはその値や変化パターンが文献1のSynchFastSlowに近く,SynchFastSlowとほぼ同じものではないかと推測している.
(2) Bicoherenceの算出方法について:Bispectral analysisから得られるbispectrumの値は元の脳波の振幅の大きさに左右される.そこで振幅の大きさによる影響を除き2つの周波数の波の相互作用の度合い(degree of phase coupling)を見るためにbicoherenceが用いられる.しかしながら文献3に記載されている式には誤りがあるために本来0-100%に収まるはずの値がしばしば100%を超えてしまう.bispectrumは複素数の和の大きさとして与えられるため,bispectrumをスケーリングするには個々の複素数の大きさの和を用いなければならない.我々はこの点に気付き,BSAでは正しいbicoherenceの値が算出できるように修正している.
1. Rampil IJ: A Primer for EEG Signal Processing in Anesthesia. Anesthesiology 1998;98(4), 890-1002
2. Glass PS, Bloom M, Kearse L, Rosow C, Sebel P, Manberg P: Bispectral Analysis Measures Sedation and Memory Effects of Propofol, Midazolam, Isoflurane, and Alfentanil in Healthy Volunteers. Anesthesiology 1997;86(4), 836-47
3. Sigl JC, Chamoun NG: An intruduction to bispectral analysis for the electroencephalogram. J Clin Monit 1994;10, 392-404



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